沖縄の怒り

基地の縮小&返還

 1995年9月、4人の米兵による少女暴行事件が発生した。この半世紀、敗戦後の直接占領支配から日本復帰を経て、米兵の犯罪が毎日のようにくりかえされ、1972年の復帰後だけでも4700件を越えている。
その背景には沖縄における圧倒的な米軍基地の存在がある。国の面積のたった0.6%の県に全体75%の基地が集中しているのである。
 県民は怒った。米軍に対して、また無策な日本政府に対して強い抗議の声をあげた。10月21日には8万5千人もの県民が参加して「日米地位協定」の見直しをはじめ基地の縮小、返還を求める決議を採択した。

代理署名拒否

 沖縄県の米軍基地の一部は、反戦地主といわれる地主が、国との賃貸借契約を拒否していることから駐留軍用地特別措置法に基づき強制使用されている。その手続きのため、知事の代理署名が必要とされるが、大田知事はこれを拒否した。
大田知事はその理由を次のように表明した。「本県の米軍基地は、米軍統治下の布令・布告により、地主の同意も得ずに、米軍の銃剣とブルドーザーによって強権的に接収、構築されてきた。
 また、日本復帰に際しては『本土並み』と言われながら、沖縄返還協定により、そのままの状況で日米安保条約および地位協定に基づく米軍基地として提供されてきた歴史的経緯がある。

 さらに本県には、住民地域と隣接した広大で過密な米軍基地の存在に加えて、水域や空域にも多くの制限区域が設定されている。これらの米軍基地から派生する航空騒音や種々の事件、事故が県民生活に多大な悪影響を及ぼしており、また米軍基地は、本県の振興開発の大きな阻害要因となっている。」
「本県における広大で過密な米軍基地の存在、訓練にともなう航空機騒音や環境破壊、軍人・軍属による犯罪の多発、最近起こった非人道的な児童暴行事件を契機として、県民の幅広い抗議の声、などを考えると、立会・署名押印は機関委任事務として定型的に処理することは多くの問題を内包しており、この際本県にはあまりにも過重な負担を強いている米軍基地のあり方を厳しく問わざるを得ない。
以上のような状況を踏まえ、今回の土地調査および物件調査への署名押印は、きわめて困難であるとの考えから、署名押印はできないと判断した。」

最高裁判決「沖縄の訴え退ける」

 沖縄県の米軍基地要地を強制使用するため、首相が大田知事を相手取り、手続きに必要な土地・物件調書への署名を求めた「沖縄代理署名訴訟」の上告審で、最高裁大法廷は8月28日、知事の上告を棄却する判決を言い渡した。
これで沖縄の米軍基地問題に司法の最終判断が示された形だが、県側にとっては50年間の沖縄の訴えがいとも簡単に退けられたことに怒りが向けられた。
判決の骨子は次のとおり
●駐留軍用地特別措置法は合憲で、その適用は首相の政策的な裁量にゆだねられている。
●首相の使用認定処分に重大で明白な落ち度はなく有効である。
●知事の署名拒否によって、国は安保条約上の義務を果たせなくなり、公益を害する。